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2月14日
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NHK-BSで手塚治虫の特集番組をやっていました。私は「ブラックジャック」が大好きです。

最初に読んでいたのは小学生の頃でしたが、30才頃、やたらと読み返し、当時つけていた日記に模写までしてました。

それを思い出して、押入れから当時の日記を発掘してみると、その哲学的な言葉に惚れこんでいたことがうかがえます。

私の青年期はアニメと漫画一色でしたが、今思い返した時、そこには数人の才能しか思い出せないことを興味深く思います。

すなわち、手塚治虫・宮崎駿の二大巨星。それと(私の場合)松本零士。

皆、敗戦から何かをつかんで、心の核のようなものを確実に形成している気がします。

ただ、松本零士の作品が、日本の敗戦の裏返しそのままなのに対し、手塚や宮崎両氏の作品は、もう少し普遍的な世界へ昇華させています。

日本の文化史にとって、手塚治虫の創作は、夏目漱石と肩を並べてもいい、と、とりあえず言ってしまいましょう。

 

 

BlackJack

〜 誤解を招くことのないよう少し解説を 〜

「この空と海と大自然の美しさのわからん奴は、生きる値打ちなどない!」

高額報酬を受け取るブラックジャックの財産に目をつけた悪党が、彼を拉致してその隠し場所まで案内させる話です。

そこは、大怪我をした幼いブラックジャックの世話をしてくれた看護婦を弔うための墓としてブラックジャックが買った(自然の豊かな)無人島だったのですが、

金に眼の眩んだ悪党たちは、その墓が財産の隠し場所だと思って墓を暴こうとします。しかし悪党たちは、ハブに噛まれて瀕死の状態になり、彼に助けを求めます。

話の始めから最後まで、金を得ること(自分のこと)ばかり考える、そんな悪党たちに向って放った一言です。

命を救う立場のブラックジャックが、しかし、生きる価値のない“生き方”を決然と言い放つ大胆さ。表現をサービス業と思っていては描けない一言と思います。

 

「私には一生わからないかもしれない・・・・。私には切るだけ(手術するだけ)が人生なんだ」

ブラックジャックは、自分が手術で使い、刃のなまったメスを鍛えなおしてもらうために、日本一の老鍛冶師を訪れます。

ブラックジャックはこの鍛冶師を褒め称え、「あなたに鍛えてもらった道具で、私は自信をつけました」というが、老鍛冶師に

「お前さんの覚えたことはロクなもんじゃない」と諭されます。メスを鍛え直すと、老鍛冶師は寿命を悟ったかのように亡くなりますが、遺書として残した

「天地神明にさからうことなかれ。おごるべからず。生き死にはものの常也。医の道はよそにありと知るべし。」という言葉に対するブラックジャックの発言。

私は「技術を誇って人間にとって本当に大切なものを見失うな。」という意味にとれ、芸事すべてにも同じことが言えると思うのです。